この一年、鮭の切り身を冷凍庫に欠かしたことがありません。晩食の肴やご飯のおかずに重宝しています。近所のスーパーで売られている冷凍切り身は、おひとり中年にとって大切な食材。
今回は、そんな身近なサケの切り身の前身、鮭の遡上を見にいったお話です。
なんとなく、生臭そうな匂いが立ち込めているのではないかと。この目と鼻で確かめに行きました。
おひとり中年が暮らす地域は、日本海へと流れ込む川が流れる内陸部です。現代みたいに流通や保冷技術が発達していなかった昔は、魚は貴重なたんぱく源。特に鮭は貴重な魚であり、年越しに塩鮭は欠かせない存在です。
子供のころ年末に祖父宅に行くと、必ず新巻鮭が用意されていました。とても塩が効いていて、残った焼きサケを翌日はお茶漬けにして食べた記憶があります。今は亡き祖父が、このお茶漬けが好きだったな。
そんな新巻鮭とは縁遠くなったおひとり中年ですが(独り身に新巻鮭は持て余すから💦)、身近な場所に、鮭の遡上が見られる場所があると聞きまして新潟県上越市へと向かったわけです。観察は、見学料もかかりませんからね。
上越港の方角を見ると飛沫が立っています。風は弱いのですが、海は荒れており沖合を行く船の姿はありません。遠くまで響く打ち付ける波音が心地よい。
この辺は、砂浜はなく小石の浜があり、ホンダワラらしき海藻が打ち上げられておりました。この浜から香る潮の匂いがまた嬉しい。生臭さとは別の不思議な香り。海に来たことを実感。
ここでふと、思いました。こんな荒れた海から鮭は遡上してくるのかと。とてもじゃないけど、荒れた海で方向感覚が掴めるとは思いません。鮭だって、「今日はやめておこう。」と考える日があるはず。
もしかしたら、今日は空振りかもしれません。
遡上場所近くの無料駐車場に車を停めて川(遡上ポイント)へと向かいます。
港町を散歩する機会があまりない、おひとり中年にとって楽しい散歩です。隧道に散らばる漂流物らしきもの。そして、漂う潮の香り。海辺の街の美しさはありますが、波風の厳しい環境を感じさせます。
アーチ状の奥側トンネルは、鉄道の名残でしょうか。レンガがいい感じ。
カメラ片手に進みます。昔からの街道沿いの街です。上越と北陸を結ぶ街道だったのでしょう。写真には写っていませんが、地酒の看板を掲げる酒屋さんやお寺もあります。
国道から逸れた人通りなく、静かな街です。雰囲気的も、昔からの街道沿い。
ずんずん進むと、遡上ポイントに到着。そこは、日本海に流れ込む浅めの川でした。
浅く水面がきらきらと光ります。パッと見は普通の川。海に注ぐ小さな川です。
海は波が高いのですが、川面は落ち着いていました。
海はすぐそこ。橋の向こうは波が高い海です。こんな荒れた海を泳ぎ、川に入れるのでしょうか。交通費(ガソリン代と高速道路料金)をかけてやって来た、おひとりさまを悲しませないでもらいたい。そんな気持ちで川を覗き込みます。
いました。鮭が。
川底が浅いので、すぐにわかりました。
写真左側が海、右側が川の上流です。上流側に頭を向けて縦長な物体が鮭です。
身を捩らせたりバシャバシャと弾けたり。鮭の躍動感に生命を感じます。普段、飼育している金魚しか見る機会がないので、鮭のような大きな魚を見られることだけでも感動します。
すいすい泳ぐわけではなく、一所にとどまる感じ。しばらくとどまり、産卵と同時にパシャパシャ弾けます。たぶん写真は、メスと産卵の機会を窺うオスなのでしょうね。
鱗がはがれたのでしょうか。白い魚体が目立ちます。周辺にはカラスも。想像ですが産卵を終えて力尽きた鮭を狙っているのでしょう。聞こえるのは、鮭がたてる水音と海からの波音、川のせせらぎ、カラスの鳴き声。
川辺の匂いはどうなのか。(我が家の金魚は産卵時に生臭さを漂わせます。)
産卵で鮭が弾ける川は、生臭さが漂うのか。結論は、無臭でした。屋外ということもあるのでしょうが、金魚の産卵のごとく漂う生臭さは全くなく。私としては、匂いも含めて鮭の産卵を感じたかったのですが・・。少々、残念。
それでも、鮭の産卵シーンや海辺の景色を見られたことに充実感を感じたのでした。
実は昨年も見に行き、身近な秋の風物詩になってます。
きっと、来年も見に行くのだろうな。